imgaf6fb9c3zikazj 88年に中日ドラゴンズがドジャースと合同キャンプを行ったとき、広いドジャースタウンの中で、移動するとき選手たちは気軽にファン・サービスしていた。

 それを遠巻きにみながら、ドラゴンズの選手たちが「うわ、練習中にサインなんかして、コーチに怒られないのかなぁ」なんてつぶやいたものだ。

 その後、Jリーグが発足したり、野茂英雄のドジャース入りもあり、日本のプロ野球も人気にあぐらをかいてはいられないという風潮がじょじょにたかまっていった。

 なので、松坂大輔の今回のケガは残念でならない。年齢も年齢なのでひとつひとつのケガが命取りになりかねないからだ。
 
 体調管理にはずっと気をつかってきた。

 ボストン・レッドソックス時代、はじめてのシカゴ遠征で、はじめて行くシカゴカルビという焼肉屋で、松坂は前もって「焼き魚定食」を予約していた。

 「シカゴカルビ」はいわゆる韓国焼肉の店なのだが、シカゴには試合の後、遅くまでやっている日本食レストランが他にはない。大リーガーたちに気心を知れている店なので、松坂は焼肉定食を頼んだのだろう。前もって仕入れなければ、裏メニューにも焼き魚はおいていない。

 アスリートたちはなかなか言葉にはしないけれど、たいてい皆ものすごくゲンをかつぐ。家族にしてもそうだ。ゲンかつぎを途中で口にしてしまうと、効果がなくなってしまうと思い込んでいる輩はとても多い。よく名前の漢字をかえたりする選手がいるが、あれはだいたいよく当たる占い師などに相談している。

 人事を尽したら、あとはもう天命を待つ。

 何を怖れているかといえば、ケガなのだ。ぎりぎり自分をおいつめるところまで練習しているから、ケガは何よりも恐れる。ケガしてしまったら、せっかく鍛え上げたものが、また1にもどってしまう。何より選手寿命にひびく。

 強かったときのオークランド・アスレチックスはスピリチュアル・カウンセラーにはまっている選手が多く、試合前は順番に電話にかじりついていたものだ。

 余談になるが、グリーンカードの面接についてはしかたがない。筆者も経験があるのだけれど、あれは1-2週間前にいきなり面接日の指定がくる。
 日づけを変更してもらうことは可能だが、その場合はシーズン中、それこそ明日が先発というときに面接日が指定されてくる可能性もある。
 ほんの数時間で終わるのだから、さっさとすませてしまったことは正解だと思う。あとは10年に一度、更新があるわけ。
 松坂はとても家族思いだ。子供がフィギュアスケートにはまっているから、日本とアメリカの両方で生きていける環境を用意しておきたかったのだろう。

 ともあれ今は松坂の回復を祈りたい。(写真・文責/ 梅田香子)