ブロック背景
 ジュニア男子は注目を浴びる戦いとなりました。
応援の垂れ幕も気合いが入ったものが並びます。
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太田由希奈コーチと柴田嶺コーチも。
 昨季のケガから復帰し、今シーズンの夏季フィギュアで優勝した堀義正選手(新渡戸文化中高SC)、アイスダンサーとしても注目の西山真瑚選手(目黒日本大学高等学校)と二大スターがそろいます。

 早朝の公式練習から選手たちの熱気で氷が溶けんばかりです。選手はウォームアップから真剣な顔つきで、各種のジャンプも丁寧に確認していました。
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 対照的に西山選手はほとんど飛ばず、他のパートを入念にチェックしていました。

 3番滑走の西山選手。普段はカナダのクリケットクラブに拠点を置いています。日本では樋口豊コーチに師事。今大会では樋口コーチの元で指導している柴田嶺コーチと太田由希奈コーチが帯同していました。
 
  昨年、吉田唄菜選手と組み、ダンスカップル・うたしんを結成。伝統の三笠宮杯では鮮烈なデビューを果たし、8月末に行われたJGPアメリカ大会では6位に入る好成績をおさめました。

 ショートプログラムは『アラジン』から『フレンド・ライク・ミー』。振り付けはジョイ・ラッセルさんです。陽気で自信たっぷりのランプの魔人・ジーニーを演じました。
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 衣装もジーニーを意識した青のシャツにサスペンダーです。
 

 ジャンプは冒頭のトゥループ+トゥループ、ループ、アクセルはシングルです。伸びやかなスケーティング、スピンのポジションの美しさはさらに磨きがかかっています。動きにあわせて表情に豊かに変化させ、ミュージカルスターさながらのカリスマ性を放ちます。 
 

 
 PCSは出場選手の中でトップの28.00。トータルスコアは42.11で4位発進。本人もこのスコアには満足の様子でした。
 
 演技終了後の囲み取材では息を切らせながらも、時折、「あははは」と明るく笑いながら、記者からの質問に答えていました。

ジャンプなくてもあれだけ楽しめるのかというプログラムでした。シングルの試合は久しぶりだと思いますが。
西山「ダンスとはまた違った。そこまで緊張はなかったんですけど、違った感じがあって。一人では寂しいなという感じはあったんですが、楽しんでできました」

ダンスもやっている中で試合に出るのはどんな感じですか?
西山「今年の夏の頭に腰を疲労骨折してしまって。で、夏の間、ジャンプができなくて。まだジャンプをしていい許可はおりていないんですが。けど、去年、ケガして、東京ブロック、全日本ジュニア、全部出られなかったので、今年こそは全日本ジュニアにシングルとして出て、シングルでも出て。待っててくださるお客さんに自分のシングルスケートも見てもらいたいなという気持ちも強かった。全部、シングル(ジャンプ)というのはちょっと東京ブロックにかけている選手もいると思うので、失礼だなという気持ちもありつつ、どうしてもやりたいという気持ちがあったので、ぶざまな演技でも精一杯演じ切ろうと思って出ました」

シングルでやっていきたい?
西山「どちらでもやっていきたいなっていうか。どちらも今のところは楽しんでやりたいなと思っているので」

このプログラムは衣装の色といいジーニー。
西山「はい、ジーニーです(にっこり)」

どんな気持ちで滑っていますか?
西山「ジーニーになりきって、かっこつけてやるみたいな。かっこつけて、楽しく。見ているみなさんも楽しくなるような演技ができたらいいなと思っています」

ダンスの方でも先日、JGPアメリカ大会が素晴らしかったですが、ダンスの経験を経てどうですか?
西山「ダンスは今年、夏にジュニアグランプリを含め3つ、大会に出たんですが。ひとつひとつの大会で、着実に経験を積めていっているので、そこはすごいやっていて、うまくなっているなという実感はあります」

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西山「生きている部分は多くあります」

たとえば、アピール力が増したかなと思うんですが。
西山「ダンスを始めたことによって、世界に目をむけると、世界のアイスダンサーに目を向けると、すごい表現力があるので。やっぱりそこをダンスでも意識、より意識し始めたので、そこが自然にシングルでも生きてきているのかなと感じてはいますね」

疲労骨折ということですが、ジャンプはどれぐらいで?
西山「実は今週、MRIも撮っていて。とりあえず回復の兆しがあるということだったので、東日本までには少しずつジャンプの練習を開始できるようになるかなとは思っていて。もし通過できたら、全日本ジュニアに行ける形になりますね」

一番の目標は全日本ジュニアですか?
西山「全日本ジュニアに出て、みなさんに演技を見せたいなと」

ダンスは今年、西日本で行われますよね。
西山「そうなんです。今年は西日本なんで。東西選手権は体力的に楽なんですけど、東日本はシングルだけ、西日本はアイスダンスだけになりますが。初めてふたつ同じ競技を同じ大会でやるのが全日本ジュニアなんで、そこは自分でも不安があるんですけど。とりあえずやるだけやってみようと思ってやってみます」

両方挑戦したい気持ちはどこから?
西山「クリケットクラブにカナダ代表のアイスダンサーが二組いるんですけど、そのアイスダンサーたちはダンスもやっているし、シングルも両方やっています。一人男の子は今年、ジュニアグランプリにアイスダンスにも出て、シングルにも出ている男の子がカナダ代表でいて。それを間近で見ていると、両方できるんだという風に思って。自分ももうちょっとやってみたいと思ってやっていますね」

アイスダンスとシングル両方出ているカナダの選手の名前を教えて下さい。
西山「コーリー・セセリ(※)っていう男の子なんですけど。今回はジュニアグランプリ、フランス大会にアイスダンスで出て、今週のポーランドにはシングルで出て。二週間後のイタリアにもダンスで出るというむちゃくちゃすごい(笑い)。すごい子です」
※コーリー・セセリ(corey.circelli)。イギリス出身の17才。オリビア・マッキザック(Olivia MCISAAC ・17才)とカップルを組む。


明日のフリーは?
西山「明日も演じたいと思います。フリーは去年と継続で『エデンの東』をやるので。少しブラッシュアップした振り付けもあるので。そこに注目してもらいたいですね」

昨年は東京ブロック、抽選のところまできて…。
西山「はい、そうです」

棄権でしたよね。
西山「はい。棄権でした」

その頃、アイスダンスのことは?
西山「まったく考えてなくて。ブロック前にそれも腰なんですけど、ケガをしてしまって。完全に棄権したっていうときには途方に暮れたというか。あー、今年、何もなくなったと思ったんですけど。去年の冬、平昌が終わったあと、クリケットのアイスダンスのコーチにアイスダンスに誘われていたので。東京ブロック棄権したときに、あー、今、暇があるからアイスダンスのことも考えてみようかなと思って。始めてみました」

パートナーの吉田唄菜選手とのご縁は?
西山「連盟の方からご紹介してもらって。」

彼女は前のパートナーがやめてから一人でずっと練習していたんですよね。
西山「そうなんです。苦労していたんで。はい、そうですね」

シングルもずっと続ける?
西山「いずれかはどちらに決めないといけないなとは思っているので。まあ、今、具体的に言えないですけど、どちらかにすると思います」

今季は両方?
西山「もうちょっとしばらくは両方やりたい気持ちがあります。シングルでやり残したことがあり、それをまっとうしたらと考えています」

アイスダンスはステップ、リフトなどで特に体力面でも足に来るものですよね? それとシングルとの兼ね合いはどうですか?
西山「ものすごく大変です。シングルの練習の量は変えずにただただダンスの練習をつけているので。きついです」

今の練習としてはダンスとシングルの両方をやっているわけですね。
西山「そうです。シングルの練習の量は変えずにやっているので、体に負担はかかっていると思います」

アイスダンス出身のコーチがそろう本場のクリケットでできるのは大きいのでは。
西山「本当に環境として素晴らしいところでやれていますね」

コーチのトレイシー・ウィルソンさんも、西山さんたちのダンスを見て、素晴らしい二人だと絶賛されていたと聞きました。
西山「この間のアメリカ大会にも帯同して下さって。僕たちとしても心強かったし、それでいい結果が出せてすごいうれしかったです」

 シングルとアイスダンスの二刀流が相乗効果となって、良い結果をもたらしているようです。

 ショート1位の選手は最後の9番滑走。プログラムは佐藤紀子さん振り付けの『カイジ 人生逆転ゲーム』です。
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 冒頭のトリプルアクセルは高さがあります。1.60の加点がつきました。ただ、そのあとのジャンプが乱れてしまいます。ループはダブルに、コンビネーションも最初のフリップがダブルになってしまうミス。それでも最後までスピードが落ちず、気迫ある演技でショートは50.59点と2位に6点以上の差をつけました。

 1位通過といえども、納得の演技ができなかったのか。言葉の端々から悔しさをにじませました。

ショートを終えていかがですか?
堀「全体的には悔しい思いしかないです。最初のトリプルアクセルを決められて、加点をもらえるトリプルアクセルと実感していたのですが、全体を通してみたら、その喜びがちょっとなくなってしまうような演技でした」

ジュニアの戦いがここから始まりますが、どうですか?
堀「スタートとしては、まあ悪いスタートではあったんですけど。今回、自分の中でも前回の課題だったスピンの面では結構、スピンは自分の中でも上出来だったと思えるスピンだったので、これから先のシーズンの戦いで、スピンがうまく組み込めていけるかなという
実感は持てました」

去年は復活のシーズンということで、今年はまた違ったシーズンだと思いますが、どういうシーズンにしたいなというのはありますか?
堀「去年もそうだし、今のショートもジャンプの失敗が目立つ部分があったと思うので。強くジャンプを安定させて、より加点がもらえるようなジャンプを作り上げて、そのあとにスピンもしっかりやって表現力の面でも見せていければいいなと思っています」

1年前の自分と違いますか?
堀「体の重さが全然違います。体重が去年はだいぶあったので、体重で左右されないと思っていたんですが、8キロぐらい違うので。簡単に浮いてくれます。だからジャンプの上達が手に取るようにわかります」

8キロ違います?
堀「だいぶ、頑張りました」

練習で来ている分、体が絞れている?
堀「もちろん、それもありますが、私生活の面でもごはん、食生活に気を使ったり、練習量も増やしたので、勝手に体が軽くなっていってくれたほうが大きいです」

それはなんで絞ろうと思ったんですか?
堀「体が重いからです。ジャンプが上がらなくて、後半までジャンプが持ってくれなかったので。冒頭の2本で終わっちゃうような体力だったので。体力をつける運動もしていたのですが、それでは足りなかったので、減量も始めて。いま、いい感じになりました」

東日本、全日本とあると思いますが。全日本ジュニアはどう見据えていますか?
堀「全日本ジュニアはより完ぺきに近いというか、より完ぺきな演技を目指して日々、練習するのと、あと、自分を試合に出られなかったシーズンを含めて、自分というものを印象付けたいなと思っています」

試合でトリプルアクセルをやれているのはどうですか?
堀「去年の課題であったトリプルアクセルを高く成功させる面ではいいんですが、それに力を入れすぎている思いもあるので、他のジャンプも固めていきたいと思っています」

明日はどんなふうに滑りたい?
堀「もちろん、冒頭のトリプルアクセルもそうなんですけど、最近、練習でも後半にジャンプを入れられるようになったので。後半をしっかりまとめていきたいと練習してきました」

夏季フィギュアでも話が出ましたが、アクセルを決めて、そこからの流れで安心するところがある?
堀「自分ではそういうところはないですけど、おそらく無意識の中ではあるんだと思います」

コンビネーション、あの入りはフリップですか?
堀「フリップです。ルッツにエラーがついてしまうので、ルッツのエッジエラーが修復されるまではフリップで行こうかなと思います」

今日はたまたま失敗してしまった?
堀「はい。練習ではほぼ、全部成功できていたので。今日は6分間からフリップが高くあがりすぎる日だったので、ジャンプの入り方から軽くしようかなと思ったんですが、それが裏目に出て失敗してしまいました」

 ここでフリー滑走抽選の時間が来たため、囲み取材は終了。
 2位には小田垣櫻選手(江戸川クラブ)、3位には鈴木楽人選手(駒場学園高校)が入りました。 
 もう少しレポートはつづきます。

 結果はこちらにアップされています。2019 東京ブロック選手権大会


 <撮影・文 廉屋友美乃>