
セクハラ被害告白の「#MeToo」(私も)運動が広まって、初めて有罪となつた著名人として注目されていた。
アメリカを代表するコメディアンといえば、そう遠くない昔、ビル・コスビー。彼は「アメリカの父」と呼ばれた。
「アイ・スパイ」というTVドラマは、テニス選手とコーチが試合で世界を旅する。がしかし、実は2人とも実はCIAのスパイという奇想天外なコメディだ。
放送開始は1965年。まだ公民権法がとおった翌年、黒人が主役というTVドラマは前例がなかった。
そのためCMスポンサーが降りたり、南部では放送されなかった事実は、アメリカの歴史の一部といっていい。
1984年から放映されたホームコメディ「コスビー・ショー」で、彼は人気を不動にものにした。
それまでは「テレビに出る黒人は犯罪者かスポーツだけ」と言われていた常識をひっくり返したのである。
コスビーはニューヨークに暮らすリッチな医者を演じて、私生活でも5人の子を育てる理想的な父親像として、
「暴力や犯罪を賛美するラップは、黒人の尊厳をおとしめている」
とイメージ向上を訴えつづけてきた。
ところが、である。
その一方で、コスビーはセクハラやレイプで事件を起こしつづけた。
2000年、当時20歳の女優がセクハラで、警察に通報している。
2005年、別な女性が薬を飲まされ、レイプされた。これも示談となり、大きくは報道されなかった。
2015年12月になって起訴されたのは、ネットによるものが大きい。
ハニバル・ビュレスというコメディアンが、「コスビーは汚い言葉は使わないそうだ」と話し、「だがな、あいつはレイプ犯だよな」と。
このステージの動画が拡散された。
つづいて、「ワシントン・ポスト」紙に元モデルが手記を発表した。1987年、当時10代で女優死亡だった彼女は、コスビーの自宅でワインをすすめられ、気を失ってしまい、服をぬがされてレイプされてた。
次々と同じ被害にあった証人たちが名のりをあげ、被害者の数はなんと60人以上。。
コスビーの雇った弁護団はモンゴメリー郡のケビン・スティール検事や、告発した女性たちと激しく法廷で争った。
弁護士団の主な主張は次のようなもの。
・81歳は刑務所では高齢すぎる。服役の代わりに自宅軟禁を要求。
・被害者の女性を名指しで「詐欺師」と断定。・単に注目されたいだけ。
・証言に立った女性たちは、なぜもっと早く訴訟を起こさなかったのか?
・コスビー被告は長男を亡くし、精神を病んでいた。
2018年4月、男性7名と女性5名から成る陪審団は、2日間にわたる審議の上、有罪評決に達した。
同意なしでの強姦、無意識下での強姦、薬物を服用させた上での強姦、以上3件の罪で有罪の評決を下していた。3年~10年の不定期刑である。
オニール判事はコスビー被告を「凶悪性犯罪者」として認定。生涯にわたって性犯罪者リストに名前が登録される上、月に一度のカウンセリングを受けることが義務付けられた。
妻も子供たちもコスビーの潔白を信じて、コスビー同様、判事や陪審員のことを非難するコメントを発表している。
日本と違う点は、過去のDVDや映画が発売停止にはなっていない。
<了>
妻も子供たちもコスビーの潔白を信じて、コスビー同様、判事や陪審員のことを非難するコメントを発表している。
日本と違う点は、過去のDVDや映画が発売停止にはなっていない。
<了>