オーティスラッシュ一家

 オバマ・ケアは今でもありますよ。トランプは4年間、医療保険については新しいプランも何もださず、そのままでした。


 医療保険の問題は反対意見も多く、なかなか改革が進みませんでした。
 8年の任期を終えてヒラリー・クリントンがそれを受け継ぐ予定でしたが、4年前の選挙で負けてしまったのです。

オバマが大統領になって、まず最初に変えたこと、それは国民が誰でも保険料を払えば、保険に加入できるようになった点です。

当たり前?

当たり前じゃなかったんですよ、前は。

 
 保険に加入するとき健康診断があります。ここで糖尿病とか、既往の病気が見つかったら、断られます。

保険に入っていても途中で手術したりすると、どこか別な州に引っ越してもう一度、同じ会社の保険に入ろうとしたら、断られた人もいます。

5年ぐらいはもう加入できません。
 その間は無保険です。

だから、オバマが大統領になる前、アメリカ人は約半数が無保険でした。加入しようにも加入できなかった。

それをオバマ大統領が変えて、誰でも入れるようにしたため、今は国民の8割が今は保険に入っています。
 その代わり毎月の支払い額があがってしまいました。とくに富裕層から、不満の声は大きいです。

 

医療保険と大統領選挙で、思い出す話。

シカゴ・ブルース界の巨人、オーティス・ラッシュといえば、エリック・クラプトンやサンタナがもっとも尊敬しているミュージシャンです。

シカゴカブスの球場から、ラッシュ一家が住んでいる高層マンションが良く見えます。

オーティス・ラッシュとカブスのファンで、ほとんど全試合をテレビで見ていました。
 試合中に何か疑問点があると、記者席にいる私に電話をくれたりしたものです。

「選手たちはなぜ目の下を黒くのっているの?今そのことで夫婦ケンカしてるだけど」とか。

私の子供が小さいとき、ベビーシッターがドタキャンしたりすると、オーティスの奥さん、マサキさんがよく預かってくれました。次女の名づけ親でもあります。

長女は成長してからお菓子作りにはまり、ラッシュは甘さがおさえめのクッキーをとても気にいってくれたのです。

 

ここでまた医療の話、アメリカには公的な医療保険制度が2つあります。

1つはメディケア(Medicare)といい、これは65才以上の高齢者や身体障碍者や透析や腎臓障害をもった人が対象です。

もう1つはメディケイド(Medicaid)といい、低所得者向けです。国民の約8.8パーセントが入っています。

 

なので、中流の労働者階級になると、65才になるまで国民保険に入れず、民間のブルー・シールズ社なんかに加入します。

たしかに毎月の掛け捨てで、料金も安くありません。いろいろなコースやオプションがあります。

自営業は厳しいものがあります。
 フィギュアスケートのコーチもたいていどこかで副業をもっています。

スーパーマーケットでもスケート場のスタッフとか、どこかベネフィットがついている会社で社員になると、保険金も負担してくれます。いい保険に入っていると、かなり好待遇です。

 


 ラッシュ一家では妻のマサキさんや2人の娘は、医療保険に入っていましたが、オーティスは糖尿病があったので、断られてしまいました。

2004年にオーティスは脳こうそくで倒れて、リハビリの生活がつづき、医療費は毎月3000ドル(日本円で約30万円)をこえたそうです。

 オーティスがつくったI Can't Quit You Babyはレッド・ツェッペリンのカバーで大ヒットしたし、クラプトンのAll Your Love もオーティスの作品です。
 曲の使用料が世界中から入ってきますから、生活費はまかなえました。
 医療費だけが重くのしかかってきます。
   もし払えなかったら?収入がオーバーしているラッシュ家ではメディケイドは取れません。治療をとめたら、それは死を意味します。

   65才になったらやっとメディケアに入ることができて、楽になりました。


もともとマサキさんは1975年、オーティス・ラッシュの日本ツアーのとき、神戸のオリエンタルホテルで食事していて、たまたま隣のテーブルがラッシュだったそうです。
 自分はミュージシャンだからライブに来てくれ、と言われ、

「リムジンで迎えにきたら行ってやるわよ」

と言ったら、本当にリムジンがきて、驚いたそうです。

シカゴ市長のエマニエルはオバマの片腕と言われた人で、何ともマサキさんやオーティスに電話してきて、2016612日を「オーティス・ラッシュの日」と決めました。

エマニエルは大統領選挙に出てくるね~と噂していたけれど、出てきませんでした。この話はまたいずれまた違う機会に。↓この動画がエマニエル市長。


 
 このとき
私も夫も最前列の招待席で見ていました。実は私の離婚と再婚も、ラッシュ夫妻の励ましがあってこそ。
「あんな最低の男、早く別れなさ~い」

私の夫はもともとオーティス・ラッシュの熱烈なファンで、ラッシュが名づけ親になった娘の母親ということで、私に興味をもったのがきっかけ。mixiで知り合いました。


 日本人はもともと駐在員とか保険はしっかり加入しているので、オバマのおかげで保険に入れるようになった人たちのこと、知らないようです。 

忘れている人も多いのかな? 
 大きな病気になったら日本にすぐ帰ればいいのです。帰ったその日から国民健康保険に入れます。 
 でも、それがアメリカではアメリカ人でもできなかった時代が長かったのです。 
 病気にかかったら保険会社はもう加入させませんでした。


 国民がみんな医療保険に入る→社会主義国になるのか!と勘違いする人が多いこの国で、オバマの改革はとても勇気ある決断でした。

 

2018年9月29日、オーティス・ラッシュ死去。享年83才でした。<了>

 
↓グラミー賞をとった作品。メンフィスのロイヤルスタジオでレコーディングしたそうです。

Any Place Im Going
Rush, Otis
House of Blues
2000-07-10




 
日本人だと近藤房之助さんがこの曲を好きで、レコーディングしています。もともと夫とは古い友だちで、最初にオーティス・ラッシュを聞くといい、と教えてくれたのは房之助さんなんだそうです。

1968
近藤房之助
ヅァインレコーズ
2010-07-07