現時点でいえること、史上最もデカいエリのスーツを着た監督就任会見であった。この記録はおそらく当分やぶられないであろう。 https://t.co/KLn88L152k
— 梅田香子 🇺🇸新刊「ヒトラーと握手した日本の少女 稲田悦子伝」 (@yokoumeda) November 4, 2021
お笑い芸人も勝てそうにない、笑いにあふれた新庄のトークはのオジー・ギーエン元シカゴホワイトソックス監督を彷彿させた。
ともかくギーエンという男、30秒と黙っていることがなく、コメディアンさながら、周囲を笑わせてばかり。現役のときからに日米野球で秋葉原にアテンドしたり、家族で栗山英樹(元日本ハム監督)とミニゴルフをしたりする機会があった。
監督になってからも試合前のダグアウトで、記者に囲まれながら、自分の写真がのっている雑誌を手にとり、
「わーお、それにしてもオレなんていい男なんだろう。女たちはみんなこの写真を見て、オレにほれてしまうだろうな~。うーん、もうチュバチュバ!」と、雑誌の写真にキスしまくったりする。
ベネズエラ人なので英語になまりがある。シカゴは寒いのでクビによくタオルをまいて、マフラーの代わりにしていた。その様子は日本のたこ焼き屋のおじさん風。井口資仁(現千葉ロッテ監督)が横に立つと、顔だちが濃い。なんだか見ているだけで笑いがこみあげてくるコンビだった。
2番打者として、打てる球がきても1塁にランナーがでると、たびたび見送りのサインがくる。ときには絶好球を見逃さなくてはならず、井口は内心かなりイライラしていた。
私は現地でほぼ全試合、取材していた。井口自身も著作で当時の心境のことは記述している。
「スマートベースボール」をぶちあげたギーエン監督の采配は、決してぶれなかった。
そして、機会あるごとに井口に感謝の気持ちを口にした。
「MVPは井口だ。本当にやつには辛抱させてしまった。やつがいたから優勝できたのだ」
ギーエンは「失言王」なので、シカゴ・サンタイムズの記者ジェイ・マリオッティに対し、放送禁止用語で大ケンカ。コミッショナーから厳重注意と罰金を受けている。
2011年4月27日には退場処分となった後、試合中にツイッターに書き込み、審判をなじった。
これは2試合の出場停止処分。メジャーリーグでは試合中のツイッターを禁止している。
2012年にはキューバのカストロを称賛する発言で、5試合出場停止処分が下された。
とはいえ、そんなことでギーエンはくじけない。笑いとばす。
ホワイトソックスの後もあちこちで監督として声がかかり、まだまだ元気だ。
新庄の言動もほんの序の口。これからさまざまな物議を呼ぶことになるだろう。
何をしでかすかわからない新庄の今後に期待したい。
彼は間違いなくかつてパリーグを変えた。今度は日本のプロ野球、しいてはスポーツビジネスそのものを変えようとしている。
<文責・梅田香子 イラスト・大日向はるか>