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 1871年(明治4年)、ホーレス・ウィルソンが日本にベースボールがもたらした。

 野球と日本語に訳したのは、中馬庚とされている。1897年5月、専門書「野球」を出版した。

 それよりも少し前、正岡子規はたくさんの雅号をもっていて、そのうちのひとつが
「野球」(のぼーる)というものだった。幼名の「升」(のぼる)という幼名にベースボールを当てたらしい。

 1896年には新聞「日本」掲載の随筆ではこう書いている。

 ベースボールいまだかつて訳語あらず、今ここにかかげたる訳語はわれの創意にかかる。訳語妥当だとうならざるは自らこれを知るといえども匆卒そうそつの際改竄かいざんするによしなし。君子くんし幸にせいを賜え。

のぼる  附記
(七月二十七日)
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 子規は帝国大学院を中退して新聞「日本」に入社する。
 日清日露戦争で新聞は「号外」もよく売れた。新聞社の数は100を越え、「日本」は最盛期には発行部数二万部をこえた。
 日本中が戦争に夢中で、子供たちの遊びは「203高地ごっこ」であり、雑誌の付録は「日露戦争のすごろく」や乃木大将の紙人形だった。
 まだ携帯カメラが普及する前、従軍記者として絵描きが戦場でペンを走らせていた時代である。
 文章や絵だけではなく、俳句も情景と感情の伝達と描写の役割を果たす。
 子規は「俳句ジャーナリズム」=写実の先駆者となった。

 随筆「筆まかせ」では戦争と野球について、こんなふうに記している。

「実際の戦争は危険多くして損失夥し ベースボール程愉快にてみちたる戦争は他になかるべし」
As a matter of fact, war is too much dangerous and costly.
No other war is as fun as baseabll

《運動にもなり しかも趣向の複雑したるはベース、ボールなり 人数よりいふてもベース、ボールは十八人を要し 随って戦争の烈しきこと、テニスの比にあらず 二町四方の間は弾丸は縦横無尽に飛びめぐり 攻め手はこれについて戦場を馳せまはり 防ぎ手は弾丸を受けて投げ返しおつかけなどし あるいは要害をくひとめて敵を擒(とりこ)にし弾丸を受けて敵を殺し あるいは不意を討ち あるは夾み撃し あるは戦場までこぬうちにやみ討ちにあふも少なからず》



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砂の如き雲流れゆく朝の秋
Autums in the morning cloud runs like sand

九つの 人九つの あらそひに  ベースボールの 今日も暮れけり
Baseball by nine people in nine position, then the sun goes down

猫の恋隣の屋根へ移りけり
Cats falling in love moved to the next roof
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黒きまで紫深き葡萄かな
Deep purple like black grapes

柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺
Eating  persimmon a ring rang at the Horyu Temple

今やかの 三つのベースに 人満ちて  そゞろに胸の うちさわぐかな
Feeling nervous because of the bases loaded just now

夏草やベースボールの人遠し
Grass in summer it remings me a far baseball

打ち揚ぐるボールは高く雲に入りてまたおちくる人の手の甲に
Hitting ball into high clouds fall down into player’s hand

久方の アメリカ人の はじめにし  ベースボールは 見れど飽かぬかも
In far America baseball was started it never got tired

国人と とつ国人と うちきそふ  ベースボールを みればゆゝしも
Japanese versus foriengers versus hit and play baseball’s thrilling

小刀や鉛筆を削り梨を剥く
Knife to sharpen a pencil and peel the pear

九つの 人九つの 場をしめて  ベースボールの 始まらんとす
Let’s play baseball nine people in nine positions

寒からう痒からう人に逢ひたからう
Maybe your itchy cold and wanna meet someone

ベースボール程愉快にてみちたる戦争は他になかるべし
No other war is fun as baseabll

一匙のアイスクリームや蘇る
One spoonful of ice cream makes me get well

桃咲くや古き都の子守唄
Peach blossom lullaby of the old city 

汽車過ぎて山静かなり夏木立
Quiet in mountain after train passed

薔薇の香の粉々として眠られず
Rose smells too strong too sleep

春風や田舎の娘我を見る
Spring wind comes a country girl like me

いくたびも雪の深さを尋ねけり
Too often asking how deep is the snow

大雨の中に四五人田植かな
Under heavy rain four or five farmers’re planting rice

サマヾヽノ蟲鳴ク夜トナリニケリ
Various insects ringing tonight

白百合や蛇逃げて山静かなり
White lily is quiet in the mountain after sneak has gone

八人の 子供むつまじ クリスマス
Xmas eight kids get along well together

昨日見た處にはなし雪だるま
Yesterday I saw a snow man that has just gone 

禅寺に何もなきこそ涼しけれ
Zen Temple there is nothing, just cool