〇ジェシカ法とは

  ジェシカ法は2005年にフロリダ州をはじめ、42の州で制定された。

  メーガン法につづいてアメリカ合衆国全土、連邦レベルでの導入も検討されたが、ブッシュ政権下では制定されなかった。
　
　とはいえ、「テキサス版メーガン法」のように再犯者は死刑もある、などどの州法も厳しい内容になっている。　　
　性犯罪は殺人と同様、時効はない。
　10代の犯罪者は名前と顔写真がでない、というルールも米国にはない。

　日本とは大違いだ。日本では多くの裁判官は子どもの発言は軽視するから、初犯だと無罪か、たいてい執行猶予がつく。そして、一般人にもどって、日常生活を取り戻す。学校や会社にも多くの場合、普通に復帰して、前と同じように通う。まわりも「よかったな」と、なぐさめてくれる。
　性犯罪になると、加害者と被害者の区別がついていない日本人が非常に多い。

   

　

　両親は１歳のとき離婚。父親はトラック運転手として働いていた。祖母にジェシカを世話してもらうことが多く、そのためフロリダに引っ越してきた。

　

　2月23日もいつもどおり夕食の後、娘に「おやすみ」を告げた。大きなサイズのトレーラーズハウス暮らしだった。

　夜10時。娘が寝たのを確認してから、父親は外出。ガールフレンドと過ごして、翌朝、早朝に帰宅したところ、トレーラーズハウスの戸に鍵があいている。中で寝ていたはずの娘がいない。ベッドの上にはピンクのナイトガウンがおいてあるだけ。目覚まし時計がなりっぱなしだった。ジェシカはいつも目覚まし時計を自分でセットして、学校に行くための起きて準備するのが日課だった。

　ジェシカの母親はオハイオ州で再婚、息子と３人で暮らし。４年前に娘にあったのが最後、会わせてもらえず、この点では前夫との仲はこじれていた。（事件が発覚した後、前夫とは和解し、協力しあった）

　

　まだ９歳の娘が一人で母親に会いにいったのだろうか？

　

　いそいで連絡をとったものの、オハイオには「来ていない」と言う。バスも飛行機も9歳の子が一人では無理だ。来る方法がない。

　

　警察に通報して、ボランティアも加わり、警察犬やヘリコプターも動員してあたり一帯を探した。

　見つからない。

　

　フロリダ州法執行機関は、父と娘が暮らすシトラス郡で 208 人の性犯罪者をチェックしたところ、同じ郵便番号のエリアには50人以上の元犯罪者が見つかった。

　そのうち一人が約２週間、許可なくフロリダから離れている。48時間以内に名のり出て尋問に応じない場合、見元を発表するとアナウンスした。

　

　それがジョン・エヴァンダー・クーイ（John Evander Couey ）、46歳だった。過去24 回の逮捕歴があり、強盗、酒気帯び運転から、わいせつ行為、詐欺、資金不足、窃盗。1991年には少女相手に、彼は刑務所で過ごし、99 年間運転免許を停止されていた

　

　なんとジェシカの家から目が届く距離に住んでいた。クーイが住んでいたのは異母姉妹たちのトレーターズハウズ。が、父親はクーイとは面識がなかった。

　 3 月 17 日にクーイをジョージア州で逮捕。ジェシカの殺害を自供した。

　

　自供によると、最初に警官が家に来たとき、まだジェシカは生きていた。

　クローゼットに少女を隠し、さらにレイプを重ねた。
　失踪のニュースを見せて、「家の場所を見られないように、帰してやる」と言って、ゴミ袋に入るようにと命じた。
　同居していたドロシー・ディクソン（47歳）、マディ・セコード（27歳）、マシュー・ディットリッチ（31歳）の３人も、それを見ていた。後に3人とも逮捕され、捜査妨害の罪で起訴された。

　犯人は「ジェシカは抵抗しなかった」「警察があのとき見つけてくれたら助かったのに」と人のせいばかりにした。

　弁護士はクーイの脳をスキャンして、平均的な脳と比較した写真を法廷に提示した。
　知能指数の判定結果はIQ78。70以下だと知的な障害とみなされるので、少し上回っていた。
　法廷の間、クーイはペンで紙にらくがきばかりしていた。
　
　判決は死刑。
　控訴が長引き、2009年９月30日、クーイはジャクソンビルの病院で病死した。プライバシーを守るため、症状や病名は発表されなかった。

<了>